コンサルタントは「機を見るに敏」たるべし

コンサルタントは「機を見るに敏」たるべし

 

学生さんとの屋号議論 

先週の土曜日にゼミ生および卒業生の何人かと両国のポパイ(www.lares.dti.ne.jp/~ppy/)で生ビールを楽しみました。(本題から外れますが、土曜日の夜で駅前でも人通りが少ないのに、この店に入った瞬間喧噪に巻き込まれました。とにかく賑わっていて、ビールが美味しいです。)

その際に、起業しようとしている一人が屋号をどうするか悩んでいて、私の事業名の意味を聞いてきました。その回答が上の標題です。今日はその由来についてお話しします。

個人的信念から選んだ私の屋号

「O-Flex ビジネス・コンサルティング」という名前は、Opportunistic Flexibility を略したものです。この言葉は 戦略は直観に従う ―イノベーションの偉人に学ぶ発想の法則: ウィリアム ダガン に関する W. Easterly が書いたWall Street Journalの書評 Surprised by Opportunity – WSJ.com からとりました。

少し長いですが、その書評の書き出しを以下に引用します。

Set big goals. Do whatever it takes to reach them. These muscular sentences form the core of commencement addresses, business-advice books, political movements and even the United Nations approach to global poverty. In “Strategic Intuition,” a concise and entertaining treatise on human achievement, William Duggan says that such pronouncements are not only banal but wrong.

Mr. Duggan, who teaches strategy at Columbia Business School, argues that the commonplace formula has it backward. Instead of setting goals first, he says, it is better to watch for opportunities with large payoffs at low costs and only then set your goals. That is what innovators throughout history have done, as Mr. Duggan shows in a deliriously fast-paced tour of history.

この下線を施した部分を指して、Easterly は Opportunistic Flexibility と呼んでいます。日本語でいうと、「機を見るに敏であれ」という意味になると思います。

ダガンによると、ナポレオンが連戦連勝したのは、自軍が優位に立てる場所を見つけるまで移動を続け、優位と見るや一気に攻めにかかったからだと言うことです。

ビル・ゲーツがMS-DOSで成功を収めたのも、ハードではなくソフトに価値があることに気づくとすぐさま方針を変更し、当時優勢だったCP/MがぐずぐずしているうちにIBMとの契約を勝ち取ったからだというのは、我々の世代は良く記憶していることです。

彼らは、「機を見るに敏」だったのであり、決して先に大きなゴールを掲げ、次にそのゴールをどうやって実現しようか、と言う順で考えた訳ではなかったのです。

この言葉は、私の経験から根ざす個人的信念を的確に表現してくれているので、それを事業の名前とすることに決めました。

信念のもととなったコンサルティング事例

その信念の背景を示すために、私自身の経験を少し長く説明します。

問題は何か? ー クライアントはなぜ問題を解けないままでいるのか?(第二話) で述べた電子部品メーカーのコンサルティングをした時のことです。

私は、そのプロジェクトに後から入ったのですが、率直に言ってプロジェクトは行き詰まっていました。全社改革構想はぶち上げたものの、今一つお客様の本気度に欠ける状態でした。コンサルタント側も後続の業務プロセス設計の段階で具体化しあぐねている状況でした。

当然、プロジェクト予算も縮小傾向となって行きました。

このじり貧状況から抜け出すため、「プロセスを作ってから適用すると言う順ではなく、現場に飛び込んで問題を解決することをさせてほしい」とプロジェクト・スポンサーに申し込みました。

スポンサーの返事は、「つぶれかけている小さな事業ユニットがある。そこでも良ければいいが、どうか?」というものでした。

私は、これが上述の Opportunity with large payoffs だと直感し、「やらせてください!」と即答しました。

つぶれかけているのでこれ以上悪くなり得ない、メンバーも必死だろうからやり方を間違えなければ必ず良くなる、というのが単純ですが直感の根拠でした。

前に述べたことの繰り返しになりますが、その事業ユニットは、最大の顧客A社からの翌々年度の受注が激減し、「呆然自失状態」と自称していました。受注減の原因は、A社からスペックをもらってそれを満たす部品を作るまでの時間が競合他社よりかかっているからでした。

A社は常時サプライヤーを評価しており、その評価の高い上位5社にスペックを出すと言うやり方をしており、お客様の評価は3位から4位に下がった所でした。この傾向が続くと6位以下の圏外になりかねません。

好機を生かす

ただ少し考えてみれば分ることですが、この問題の原因は一つしかあり得ません。それは、エンジニアのキャパシティに対して開発プロジェクトを詰め込みすぎていると言うことです。

お客様に確認すると、「それはあり得る、そうかもしれない」とのことです。ただ、本当にそうだとは誰も言い切れず、例えそうだとしても営業やA社に「これだけしか引き受けられない」と言い出せないようでした。

そこで、「これこそが問題の根源で、それさえつぶせば営業成績は自ずと良くなる」という仮説を立てました。

この仮説を立てて邁進するのには度胸が要りますが、この度胸があったから Opportunity with large payoffs が見えたと言う訳です。

好機(Opportunity) はその後も続きます。

まず、プロジェクトのリーダーとして営業の若手のホープがアサインされました。「しめた!」と思い、事業ユニットの実態を徹底して洗い出し、営業が如何に不合理なプロジェクトの詰め込みを強いているかを明示しました。

リーダーはそのデータを見るや否や、「こんなひどいことになっているのか!」と言って、事業ユニット長の所に確認に飛んで行きました。

その後はトントン拍子で、エンジニアのキャパシティの測定や、事業のポートフォリオ分析(どれを捨てるか)等の作業が進みました。

そうこうするうちに、ふとした会話からA社との定期会合が行われることを知りました。この機会(Opportunity)を逃すと改革のタイミングが遅れるので、受注範囲を絞る交渉をするよう進言(お客様には相当な躊躇いがあったので、実際は強く主張)しました。

A社の購買の方の反応はあっけなく、「仰ることは良く分かります。貴社の体力から考えると、それが合理的かもしれませんね」というもので、その後A社からの受注率は大きく向上しました。

長々と書きましたが、ビジネスが良くなるには必ず何らかの(それも一連の)キッカケ(Opportunity)があり、それを生かすか生かさないかで、その後の道が大きく変わるのだと思います。そのような事例は、その後のコンサルティングでも数多く経験しています。

まとめ:事業に関する個人的信念と屋号

以前にも書きましたように、コンサルティングというのは「他人の問題を解決する職業」です。

ここで、問題とは「望む姿」と「現状」のギャップを指すはずです。したがって、コンサルティングに際しては、「望む姿」と「現状」の双方を明らかにすることが必要になりますが、そのどちらかにバイアスしがちです。

「現状」に傾けば、現状改善型になり大きな成果は望めません。

逆に「望む姿」に傾くと、冒頭の「大きなゴールをセットして、そこに到達するためになんでもやる(Set big goals. Do whatever it takes to reach them)」というダガンが揶揄するアプローチになります。

これらのアンバランスを避け、お客様とともに迅速に大きな成果を挙げ続けるコンサルタントであり続けたいと願っています。

その思いを込めて、「O-Flex ビジネス・コンサルティング」という名前を掲げた次第です。

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