スペシャリストかゼネラリストか? ー マーケットを見て選択する

スペシャリストかゼネラリストか? ー マーケットを見て選択する

 

起業したらなぜ特化しなくちゃいけないの?

独立してもうじき3年になりますが、その間ずっと考えてきたことがあります。それは、起業に関するガイドブックにには必ず「特化せよ、スペシャリストになれ」と書いてあることです。

たとえば、パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す: ピーター・モントヤ, ティム・ヴァンディー には、「第6章 特化か、それとも衰退か」とあります。

それらの本の主張は直感的には理解できるのですが、なぜゼネラリストではダメなのかの理由を心底腹落ちさせることができませんでした。

自分は心中ゼネラリストでやってきたつもり

「何を今さら。ずっとスペシャリストでやってきたはずのお前が、何故そんなことを問題にするんだ?」と問われそうですが、実は、私は自分自身をゼネラリストだと思ってきたのです。

研究者やコンサルタントという専門家集団の中で暮らしては来ましたが、その中ではいつも解ける問題の間口が一番広いのが私だったからです。(もちろん深さは別です。)

たとえば、研究所の部門長になった時、自分の専門外のある研究グループの中の一人の研究者の仕事の評価が低かったことがあります。その仕事内容をとことん聞くと、結構有用な仕事であることがわかりました。その発表方法をアドバイスした結果、親元の米国の研究所のお偉方に高く評価されるようになりました。

コンサルティング部門でも、いつしかボスが難しかったりトラブルを起こしかけている仕事を、分野を問わず私に回してくるようになりました。

ということで、「たとえ専門性が高くても、幅広い問題を理解できかつ解決できる」というのが私の密かな自慢だったのです。

クライアント・パートナーとして過ごしたコンサルティング部門の最後の数年間は、与えられた役割と自分のゼネラリストとしての志向性が一番ぴったりはまった時期でした。

お客様から急に困りごとを持ち込まれても、大抵2-3日間で提案書を作り対応法を回答できましたし、前にも書きましたように「福永さんがうちの会社のことを一番良く知っている」と言って頂き、すべてがうまい方向に回っていました。

独立するとゼネラリストの良さが機能しなくて困った

でも、独立してみると、この歯車がうまく回りません。

中小企業を支援すると言う旗を掲げたものの中小企業のことを良く知らないので、それに関してはあちこち歩き回り、知合いも数多くできました。でも、そこでの仕事はボランティア的なものが大半でした。

本業のお金の取れるコンサルティングの方は、いくつかのチャネルは作り自分の業績を伝えたものの、殆ど機能しませんでした。仕事になったのは、自分が歩き回って知り合った中小企業の中のお金のある何社かでした。(実はのんびり過ごしたいのでそれで充分なのですが、それでは今日の話が続きません(笑)。)

どうも効率が悪いなと考え続け思い当たったのは、至極簡単なことでした。人は自分の得意なことばかりやりたがる、とは良く言ったものです。私も、無意識のうちにゼネラリスト的アプローチを取っていたのです。

ゼネラリストの本質は「信頼されている」

ここから話を先に進めるためには、「ゼネラリスト」で何を指すのか、その意味を明確にする必要があります。

別に何を引用しても大差ないと思いますが、たとえば ゼネラリスト ─ 意味・解説 : 転職用語辞典 では、次のように述べられています。

「ゼネラリストとは、特定の分野ではなく複数の分野においてある一定以上の知識や技術を持ち、仕事をしていく人のことを指します。決まった専門分野に特化して仕事をする訳ではないため、会社の中で横断的に様々な仕事を経験しながら自分のキャリアを形成していく人が多いようです。」

ここで注目すべきは、後半の部分です。一般にゼネラリストを論ずるとき、一つの会社の中で総合職として昇進していいく人たちを指すことが殆どのようです。しかし、私が経験したクライアント・パートナーもゼネラリスト的な色彩が非常に強いポジションです。

だとすると、両者に共通するところを理解する必要が出てきます。

両者に共通するのは、当人が持つ幅広い問題解決能力を周囲が「信頼」しているということです。誰もがゼネラリストになれるのではなく、「信頼」があって初めてゼネラリストとして認められるのです。

ゼネラリストの「信頼」を獲得するには安定したマーケットが必要

ゼネラリストが活躍できるのは、会社あるいはクライアントという自分を信頼してくれるマーケットがあるからなのです。

そこから重要な知見が得られます。ゼネラリストに必要な「マーケット」を獲得するのには時間がかかるということです。

これまでの日本企業は、終身雇用制のもと時間をかけてゼネラリストを養成してきました。私も、お客様からクライアント・パートナーとして認められるのには数年かかっています。しかも、その数年間を持ちこたえられたのは、IBMという組織のブランドに支えられていたからです。

同じ人間でも、組織を出て一人でやっていくことを決めたとき、それまでのマーケットを捨て組織のブランドも捨てる訳ですから、それまでやってきたゼネラリスト的アプローチがそのまま通用する訳はありません。改めて「安定マーケット」を構築しようとしても時間がかかります。(実際今の中小企業のお客様から仕事を頂くまでには、結構時間がかかっています。)

にも拘らず、私のことを良くわかってくれるレベルの高い人々をチャネルとして確保すれば、そこから安定的なマーケットが得られる、と無意識に想定したことが失敗でした。

となると、効率的にビジネスを獲得していくためにはスペシャリストとして認められるべきことは、ほぼ自明です。

キャリア設計はマーケットを見て決めよう

以上の構図は、以前にソリューションが売れるのは、次の2つのどちらか満たされている時だけだと言ったことに対応しています。

  1. 提案しているソリューションにはっきりとした強みがある。
  2. 担当の営業が顧客から信頼されている。

すなわち、スペシャリストは以前に示した下図の①と同方向のアプローチです。そしてゼネラリストは②です。

このように、ゼネラリストやスペシャリストの定義を顧客(マーケット)との関係で見て、初めて自分が取るべき道に得心がいきました。そして、前に述べたように「ソリューション営業導入コンサルティング」に特化することを決めた訳です。

ソリューション営業2

キャリア設計というのは、基本は自分というソリューションをいかにマーケットに買ってもらうかという話なのですね。番号が示すように、まずはスペシャリストとして認められ、場合によっては確保できた安定マーケットでゼネラリストとして行動することも考える、という順で考えるべきなのでしょう。

(しばらく前に話題になった ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉: リンダ・グラットン でも、連続的スペシャリストになることが奨励されていますが、良く読めば、安定的マーケットが消失しつつあることがその根拠として述べられています。絶対にゼネラリストがダメとは言っていないと読むべきなのです。)

実際、私がクライアント・パートナーとして活動できたのも、お客様に「購買改革」のスペシャリストとして入り込み、その成果が認められてのことでした。

こんなことに気づくのに時間がかかるなんて、いやはや自分を見つめるメタな自分を成長させるのも、なかなか大変です。

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