久慈に見る日本の縫製業の底力 

久慈に見る日本の縫製業の底力 

 

学生プロジェクトで久慈の縫製業を見学してきました 

5月1日、2日と岩手県の久慈市に行き、縫製工場を2社訪問してきました。ビジネススクールで今年私が修士論文の主査となった学生の調査旅行先を紹介したので、同行したのです。

私は全く疎いのですが、「あまちゃん」の舞台となった人口4万人の街で良く知られているようですね。連休の狭間で空いていましたが、3日からは人出が大変だと街の人が話していました。

NHKの朝ドラのロケ地は放送後すぐは人が殺到するが、その後は潮が引いたように人気が無くなる、と良く言われます。しかし、地元の人の言によると「あまちゃん」はスタジオ撮影よりロケが多かったためか、次の年になっても観光の勢いが衰えないそうで、ご同慶の至りです。

久慈は実は縫製業の一大集積地で、製造業の20%が縫製業だそうです。普通あまり無いことですが経産省の課長が2期連続で久慈を訪問する等、国も集積地維持に力を入れているそうです。

訪問したのは、岩手モリヤ、久慈ソーイングの2社です。

この2社については、震災の翌年だったと思いますが、銀座で開催された久慈の縫製業を支援するシンポジウムで社長さん達のお話しを聞いて感銘を受けていました。その後ご縁があって、シンポジウム主催者の方を通じて連絡を取らせて頂いていました。

以下、訪問順とは逆順にご紹介します。

仮設工場で地元の雇用を増やす久慈ソーイング中田社長

株式会社久慈ソーイング|久慈ソーイングのご案内~Japan Kuji sewing company~ は、水着専門の縫製工場です。

水着という伸縮性のある素材の縫製をやっているため、それなりの技術力が必要とされこれまで生き残ってきました。しかし、それ以上にこの会社を有名にしたのは、震災時の津波で工場が水浸しになったにも拘らず、非常に短期間で回復にこぎつけたことです。

中田社長の執念ともいえる地元の雇用への責任感がこの偉業を達成させたのですが、社長の行いはこれに留まりませんでした。

工場が全滅状態になったため、県が仮設工場を建てるかどうか打診してきました。県の了解を取った上で、中田社長は自分の土地に仮設工場を建て、震災で壊れたミシンを修理して持ち込みました。そうしてできた工場を地元の縫製技術のある中高年主婦の作業場として提供しました。

土地もただ、建築費もゼロ、ミシンも廃却済なので、減価償却費ゼロで、光熱費だけが経費としてかかります。集まった主婦は、作業場とミシンを借りて出来高で仕事をしているということです。仕事は久慈ソーイングが取ってきます。

中田社長に聞くと、震災支援をしようとする動きや、最近増えている女性の起業家達からの小ロットの仕事が舞い込むので、「なんとか赤にはならない」とのことです。

本工場の経営は常務の息子さんへ移行中で、社長自身は残りの人生を仮設工場ビジネス化のチャレンジに賭けるそうです。

技術力に唸らされた岩手モリヤ

岩手モリヤ株式会社|岩手モリヤのご案内-JAPAN KUJI CITY CLOTHES MAKING FACTORY-は、東京の一流ブランドや海外からの高級婦人服の縫製を手がけてる地元縫製業の中心的存在です。

いろいろなお話しを聞いたのですが、中でも印象に残ったのが次の2枚の写真です。

上の写真は、指定された線通りに自動的に裁断しているのですが、なんとその線は2枚目の写真にあるプロジェクタから斜めに(!)投影されているのです。

たまたま横に人がいますが、カットも終了後の生地の送りも無人操作で行われ、次の裁断が自動的に始まります。

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社名を忘れてしまったのですが、このプロジェクタ付きの裁断機を作っている小さな会社の技術力も凄いです。

さらに岩手モリヤも凄いです。

生地によって伸び縮みが違います。同じ生地でも色によって染色の時間が違うので伸度が異なります。

モリヤは、メーカーから受け取った生地についてはすべて伸度試験をしてデータを取ります。そのデータをもとに、メーカーから受け取った型紙を修正してから裁断して、縫製後の服をデザイナーの意図通りに仕上げるのです。

さらに、この型紙の修正作業をルール化しているので、処理は非常に迅速に行われるます。

その結果、花柄のレースの生地を背中で縫い合わせても、左右の花柄がピタリと合います。高級服は、ぱっと見ただけでこのような違いに起因する品質差がわかるので、メーカーはモリヤから離れないということです。

日本の縫製業の底力を維持するために私たちがやるべきこと

久慈ソーイングの執念ともいえる精神力の強さ、岩手モリヤの抜群の技術力を知れば、日本の縫製業がそう簡単に廃れはしないことがわかります。

ただ、問題は我々が彼らの強みを理解しておらず、結果として適切な支援をできないでいることです。

中田社長の思いを知っていれば、小ロットの仕事を探し地元の技術者雇用の多様化を支援することにより、地元での縫製業への応募者を増やし産業集積を守る一助となることができます。

モリヤの技術力の源を理解すれば、裁断機を作っている小企業を経営的に支える方法を考えることにより、日本の縫製業の技術力維持に寄与することができます。

日本の製造業の底力、本当の強みを理解し、それを支えていく、そのために我々のリテラシーを向上させることが重要だと気づいた2日間でした。

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