問題は何か? ー クライアントはなぜ問題を解けないままでいるのか?(第二話)

問題は何か? ー クライアントはなぜ問題を解けないままでいるのか?(第二話)

 

問題の解決策を正しく見つけることに集中すればそれで片付くのか? 

前回、クライアントが問題を解けないままでいる原因の一つは、「最初に思いついた解決策が不適切」だからだとお話ししました。では、解決策をきちんと策定すれば、問題はすべて消えるのでしょうか?

今日は、その先をさらに議論したいと考えています。

私個人は、問題解決の本がやたら売れていて、それが問題解決の十分条件である(問題解決技法を習得すれば問題が解決できる)かのように喧伝されている風潮には首を傾げています。

と言いますのは、私が大きなビジネス成果を上げたケースでは、問題の真因を探り解決策を講じること自体は決して難しくなかったからです。

具体的な例を挙げましょう。

2000年代の初めに電子部品メーカーのある事業部のコンサルティングをしたことがあります。その事業部は、最大顧客からの受注が大幅減となり、お客様自身が”茫然自失状態”と称される状態にありました。その立て直しをご支援する機会を得たのです。

受注が大幅減となった原因は、簡単でした。

最大顧客は部品カテゴリーごとに専門の購買チームを設け、その購買チームは担当カテゴリーに属する世界中の部品メーカーを常時ランキングしています。そして新たな部品発注に際しては、そのランクのトップ5社にだけ、しかも同時に、見積依頼を出します。

新部品ですから、当然その仕様を満たすための設計や試作も必要で、それを含めて条件を満たした部品メーカーの中で、早いもの順に上位2社に部品を発注するという仕組になっていました。

こうなれば受注を失っている原因は簡単です。「仕様を満たす(スペック・ミートと呼んでいます)までの時間が長過ぎる」ということです。

これをひっくり返すと、問題は「開発のリードタイムを短縮する」ということになるのですが、これには会社全体の開発プロセスの見直し等も含むため、一事業部の手には余ることがいろいろあります。その結果、茫然自失状態となっていた訳です。

問題を正しく捉えなければ解けるものも解けない

茫然自失のままでは、何も進みません。問題を解けるようににする必要があります。

プロジェクトに参画したものの、この手のコンサルティングには(いつもそうですが)私は素人です。そこで手がかりを得ようと専門書に当たってみました。このケースはラッキーで、一冊だけで事足りました。

読んだのは、Managing New Product and Process Development: Kim B. Clark, Steven C. Wheelwright です。(もう絶版なのか、Kindle版のCase付きのものしか出てきません。)著者のClark と Wheelwright は、いずれも設計開発プロセスの研究では大御所のハーバード・ビジネス・スクールの元教授たちです。(Clarkはビジネススクールの学部長を務めました。)

非常に分厚い本ですが、その中に「世界中のどこの研究開発部門を見ても、その開発能力以上のプロジェクトを詰め込んでおり、開発スピードの低下を招いている」と書かれています。

元々研究者だったので、多分そうではないかと予想をしていたのですが、これに意を強くししました。

詰め込みすぎであれば、お客様の見積依頼への対応件数を絞ればスペック・ミートの時間を短縮でき、その結果受注確率を向上させられます。どうせ負けている見積依頼への対応をやめても、ビジネスを今以上に失うことにもならないので、損にはなりません。

この仮説をもとに、お客様との会話を始めました。

「エンジニアのキャパシティに対してプロジェクトを詰め込みすぎではないですか?」

返ってきたた答えが、こうです。

「そうかも知れません。いや、多分そうだと思います、」

こうなれば答えは見えています。紆余曲折はあったものの、見積への対応件数を3分の2に減らしたら、残りの受注率は倍になりました。受注率そのものは、20%だったのが60%になったのです。

この件は、問題を「開発リードタイムの短縮」と捉えたために身動きが取れなくなっていたのが、「プロジェクトの詰め込みすぎ」と考え直したとたん解けたのです。すなわち「問題設定が不適切」だったのです。

「問題は何か?」と問い直す習慣を身につけよう

ということで、「問題は何か(何を問題として取り扱うべきか)?」をきちんと問い直すべきだということが分かります。これが2番目の Right Question です。

(何を問題として取り扱うべきかについては、ゴールドラット博士の論理思考プロセス―TOCで最強の会社を創り出せ!: H.ウイリアム デトマー  の根本原因についての議論が参考になります。)

実はこの事例にはもっと議論すべきことがあり、次回のもう一つ残っている Right Question についてのところでさらにお話ししますが、今日の締めくくりは、ある本からの引用です。

このシリーズで取り上げる3つの Right Questions に思い至った時に、永年(20年以上 )書棚に積んであった本にきっと同じことが書いてあるはずだと思い、初めて読んでみました。

読んだのは、ライト、ついてますか―問題発見の人間学: ドナルド・C・ゴース, G.M.ワインバーグ です。この本は、なかなか読みにくいのですが、実に含蓄が深いのでお勧めです。

今回の話に関して、ワインバーグ達は次のように語っています。

”われわれは、問題は何なのか?とたずねる以前にあわてて解答を作り出そうとする。”

”「私にとって最大の問題は、私があまりよい問題解決者でないことです。」などという人がたくさんいる。ふふん、だ。多くの場合に、問題を解決すること(ないし解消すること)は取るに足らない作業である ー ひとたび問題は何であるのかわかってしまえば。”

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