「何が違うのか?」というRight Questionsができれば大学院の講義も作れる

「何が違うのか?」というRight Questionsができれば大学院の講義も作れる

 

顧客価値定義

今日は、講義の内容を作るのに前々回導入した顧客価値の定義をどう使うかのお話です。

いろいろなやり方があり得るとは思いますが、私はそれぞれの箱を一つずつ片付けるという非常に単純なやり方を選択しました。

ベネフィトとは何か?

最初はベネフィットの箱です。ここで、ベネフィットを説明する必要が出てきます。「ベネフィットとは何か?」というRight Questionをして、その答えを用意する作業をすることになります。

ところが、ベネフィット(日本語では便益)は当たり前すぎるようで、コトラー先生の本でも殆ど解説されていません。個人的に用語の意味がピンとこずにその後本を読み進められなくなったという経験を数多くしているので、このままでは引き下がれません。ベネフィットの例くらいはきちんと紹介しておきたいと考えました。

そこで行き当たったのが、後発企業が先発企業を凌駕したのは何が優れていたからなのか、あるいは先発企業が市場を独占しているのは何故かの理由を理解すれば、何がベネフィットかが見えてくる、という考えでした。

その考えに基づきビジネスモデルのグランドデザイン: 川上 昌直にあった先発企業と後発企業の比較図を修正したものが、以下の図です。(元の図は、Game-Changing Strategies: How to Create New Market Space in Established Industries by Breaking the Rules: Constantinos C. Markides からの引用だそうです。)

ベネフィットの例

これでベネフィットのイメージがつかめたとして、次に移ります。

新たなベネフィットの探索法:「より良く」ではなく「どう違うか」を質問する

次は、「ベネフィットを提供する方法にどんなものがあるか」の説明をどう作るかです。(「説明をどう作るか」というところが、屋上屋を重ねるようでややこしくなっています。ご注意ください。)

まず、ベネフィットの箱には「+」の印がついています。これをどう扱えば良いでしょうか?

通常は、「今まで知覚されたベネフィットより高いベネフィットを提供するにはどうしたらよいか?」と考えそうです。でも、「より高い」では程度問題で、単なる競争の話になってしまいます。新しいビジネスモデルを考える際の参考にはなりそうもありません。

ここでのRight Questionは、「今までと”違う”ベネフィットを提供するにはどうすればよいか?」であるべきでしょう。

”違い”を問えばいやでも2つのものを対比せざるを得なくなり、対比が面白いか否かで、得られた結論の価値が推測できます。

違いの対比: 「問題が解決できない」対 「問題が解決できた」

たとえば以下のような対比ができます。

マーケティングの大家のレヴィット先生が「消費は問題解決である」と述べられています。製品やサービスを消費するのは問題を解決したいからである、という訳です。

この視点に立てば、これまで重要な問題があるにも拘らず解決できずにいた状態と、それを解決できるようになった状態を対比すれば面白そうだと予測できます。それまで存在した制約条件が解消し、潜在化していた消費が顕在化したケースです。

たとえば、Googleの広告により、中小企業でも自分の資力の範囲内で広告ができるようになったのがその例です。中小企業は今までにないベネフィットを感じています。

このベネフィット提供方法であれば、イノベーションへの解 実践編 (Harvard business school press): スコット・アンソニー, マーク・ジョンソン, ジョセフ・シンフィールド, エリザベス・アルトマン, クレイトン・クリステンセンに、「非消費者の識別」として述べられていますので、それを利用することができます。

違いの対比: 「ベネフィットを感じていた」 対 「ベネフィットを感じなくなった」

同様の視点で、消費者がある時点までベネフィットを感じていた状態と、それを感じなくなった状態を対比させるということも考えられます。

PCの出現当時は機能不足であったため、より速いCPUや大容量メモリを提供すれば飛ぶように売れたのに、それらに満足した後は信頼性やサービスの良さという機能とは別のベネフィットが求められるようになったというのが、その例です。

このなケースの扱い方も、上述のクリステンセン達の本に「過剰満足」として述べられているので、それを参考にすることができます。

たまたまクリステンセン達の方法ばかり述べましたが、新たなベネフィットを導く別の方法も数多くあり得ますので、それらについては、皆さんで探してみてください。

ここでの要点は、「今までと”違う”ベネフィットはなにか?」という質問をすることにより、新たなベネフィットを作る方法が見つかった、ということです。

お気づきかもしれませんが、最初のベネフィットの事例を見つける際にも、実は「先発企業と後発企業の”違い”は何か?」という質問をしています。

問題解決での強力な質問:「違いは何か?」、「何を変えるのか?」

この「”違い”は何か?」という質問は非常に強力です。これらの問いは、2つのものを対比させます。対比の結果、どこにフォーカスすればよいかが明確になります。

同系の強力な対比質問として「何を変えるのか?」というのもあります。

コンサルティングでは、「現状」から「ありたい姿」へ変革することが課題となります。その際、多くのコンサルタントが間違えるのが、「ありたい姿を実現するには何をすべきか」という質問をすることです。

この質問には、2つ問題があります。

ひとつは、採り得る施策の範囲が拡がってしまい、判断に迷ったり合意形成が難しくなることです。

もう一つは、現状に目が行かず、ありたい姿だけに関心が向いてしまうことです。改革では、たとえ小さくてもなにがしかの点で現状の破壊が伴わなければなりません。その破壊が現実的に可能であることの確認と影響を被る部署への配慮が必要なのですが、それが疎かになりがちです。

ここで質問すべきは、「現状」と「ありたい姿」では本質的に「何が違うのか?」、その違いを実現するためには「何を変えるのか?」です。

そうすれば、「現状」と「ありたい姿」の対比を明確にし、その主要な違いだけにフォーカスするので拡散しません。また、現状の破壊の困難さにも注意を払い、予め対処することができます。

また長くなりましたので、「何が違うのか?」というRIght Questionsができれば、講義の一部が作れるというお話しをしたところで、今日は終わります。

次回、顧客価値定義の利用方法の残りの部分をお話しすることにします。

 

 

 

 

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