ソリューション営業の終わり? インサイト営業の始まり?

ソリューション営業の終わり? インサイト営業の始まり?

ソリューション営業の価値が落ちている 

Web上の記事を読んでいたら、The End of Solution Sales – Harvard Business Reviewという論文に触れているくだりがあったので、その論文を読んでみました。

今日は、それを読んで感じたことを記します。

論文の流れをまとめると、以下のようになります。

  • 今日のB2B営業が難しくなっているのは、お客様がかつての営業方法(ソリューション営業)を求めなくなっているからである。
  • ソリューション営業とは、お客様への質問を重ねることによりお客様の問題を発見し、それを解決するソリューションを売ることをさす。ここで、ソリューションとは製品やサービスの複雑な組合わせであることが多い。
  • ソリューション営業が有効なのは、お客様が自分の問題を良く理解しているにも拘らず、その問題の解決方法が分からないという状況下でである。
  • しかし、近年お客様がどんどん賢くなり、コンサルタントを雇う等をして自分自身でソリューションを作れるようになってきている。その結果、ソリューション営業は価格勝負を迫られている。
  • 現在お客様が求めているのは、インサイト(洞察、見識)をベースに、自分たちが気づいていなかった問題を発見させてくれるインサイト営業である。
  • 優れた営業は既にこのことに気づいていて、・・・を始めている。(ここが論文の主張なのですが、このブログのテーマではないので詳細は省きます。興味のある方は論文あるいは彼らの著書 The Challenger Sale: Taking Control of the Customer Conversation: Matthew Dixon, Brent Adamson を読んでください)

 

インサイト営業

 

関連論文 In a Downturn, Provoke Your Customers – Harvard Business Review を読んでいると、インサイト営業と同様の趣旨の Provoke営業という言葉が出てきました。ここでProvoke とは、「お客様を刺激して新たな考えを引き起こす」ことを指します。

そして、Provoke営業というのはずっと経営コンサルタントがやってきたことだと指摘しています。

確かに、このインサイト営業あるいはProvoke営業というのは、コンサルタントとして私自身がずっとやってきたことなので、うまい表現をするなぁと感心しました。

コンサルティング業界でも同じことが起こっていた

同時に思い出したのは、コンサルタントも同じようにお客様の成熟化に対応し続けなければならないということです。

一時期ERPやサプライチェーンといった高度で大規模な仕組が、コンサルタント・ビジネスの重要な収入源でした。お客様の理解度が向上した今は、価格競争を迫られるようになってきています。

同様に、かつてコンサルティングの世界でもソリューション営業的なアプローチが成立していました。

90年代の初めにIBMがコンサルティング事業を始めた時、IBMは他のコンサルティング・ファームとは異なった仮設を設定しました。

通常、コンサルティング・ファームは、「コンサルタントの出来は資質で決まる」という前提に立ち、トップクラスの大学の優秀な学生を集め、お互いを切磋琢磨させ篩い落としていく方法をとります。

IBMはこれとは反対に、「コンサルタントは育てられる」という仮設に立ち、予算を設けて精力的にコンサルタント教育を施しました。お蔭さまで、私もハドソン川沿いの研修センター、シンガポール、シドニー等で何度か研修を受けられラッキーでした。

この時日本IBMで起こったのが、古参のSEの復活でした。

IBMは外資系ですので、優秀な人をどんどん昇進させマネジメント・ポジションにつけます。でも、中にはマネジメントが得意でなく部門全体の業績を上げられない人がいます。そういう人は後に続く若手に道を譲らざるを得ないのですが、日本ではそのまま辞めずに会社にとどまるので、若手の背後でくすぶることになりがちでした。

こういう人たちの現場での働き場所(しかもそれなりにチャレンジングな)ができたので、彼らが息を吹き返したのです。

私がコンサルティング部門に移動した95年は、まさに彼らが生き生きと働いていた時で、本当に良い制度ができたものだと思ったものです。

ただ、その2-3年後に妙なことが起こりだしました。彼らの何人かが消え始めたのです。そこで気づいたのが、「ソリューション営業の有効性」についてでした。

古参のSEが活躍できたのは、IBMに 問題解決技法 CPS という手法があり、高額のメーンフレームを売りSEサービスを無料で提供していた時代に、SEがこの手法を身につけていたからです。

この方法は、それなりに良くできた手法で問題解決に有効です。しかも誰にでもできるものでもありません。それゆえ、この手法を使いこなせたSEが、コンサルタントとして通用できたのです。

しかし、この方法をよく見ると、基本的にはお客様の知見をまとめあげているだけです。お客様がその方法に慣れてきて自分で使いこなせるようになると、SE自身には価値が無くなります。実際、この変化が非常に急速に起こり、CPSという手法以外に寄る術の無いSEが淘汰されてしまったのです。

「ソリューション営業」に価値が認められなくなったのと、全く同じ現象です。成熟したお客様は、ソリューション営業やCPSには価値を認めなくなり、方法ではなくインサイトを求めるようになります。

お客様はどんどん賢くなるので新しいインサイトを提供し続けることが必要

もとよりこの現象は、お客様の成熟レベルとの相対的関係で起こるものです。同じお客様でも、問題により、自分で解決策を見つけられたり見つけられなかったりします。

また、インサイト営業が有効であっても、お客様がそのインサイトを理解してしまえば、ソリューション営業のレベルに移り、さらにはプロダクト営業へ移行してしまうこともあります。

営業やコンサルタントに求められるのは、このようなお客様の問題ごとの成熟レベルを見通し、ソリューション営業で行くのか、新たなインサイトを提供すべきなのかを見極めるメタな視点です。

さらに言えば、いつもインサイトを提供しようとするのではなく、いつもお客様が陥る問題解決上の罠に関するインサイトを持っているようにすると良いでしょう。

そのようなインサイトの代表選手が、「お客様は顧客視点に立って物事を見ることができずにいつも躓く」です。

ここでニヤッとした人は、コンサルタントとして上級者と言えるでしょう(笑)。

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